ノンシャランな人
切りっぱなしの履き古しのブリーチアウト・ジーンズ。小ぶりな襟のウエスタンシャツを胸まではだけて、裸足にレペットの白い靴。こんな格好して、サマになる人はそうそういません。
時にはその上にピンストライプのテーラードジャケットを羽織る歌手であり、作曲家、映画監督、俳優とマルチな才能を持つ男が、セルジュ・ゲンズブールです。
ルールは破るためにある
その独特の着こなし「ルールは破るためにある」とでも言いたげな「ノンシャラン」スタイル。着崩すことが、彼のスタイルであり、そして常にどこかエレガントな雰囲気を漂わせる。
これは、彼の持つ雰囲気もあるが、当時のパリの空気が作り上げたものであるかもしれません。
こんな着こなし、当時の東京やニューヨークでしても、ただの怪しいおっさんではないでしょうか?
そんなスタイルをつくった女
そんなフランス的な着崩しスタイルのお手本のようなゲンズブール氏であるが、1960年代後半に稀代のセックスシンボル、ブリジット・バルドーと付き合っていた頃までは、シャツやタートルネックにスーツを合わせるようなオーソドックスで無難な文化人的なおしゃれでまとめていました。
それが、映画「スローガン」(69年)で共演したジェーン・バーキンとの交際をきっかけに、フェードアウトしたジーンズにヨレヨレのデニムシャツやレペットのバレエシューズなど、彼女が好きだったノンシャランなカジュアルスタイルへと移行していきました。
そして、彼女はファッションだけではなく、風貌にまで注文をつけたのでした。
「彼に最初のレペットは、私がバーゲンで見つけて買ってあげたものだし、髪は、もっと長くするよう私がお願いしたの。髭もそう。無精髭の人がとても好きなの」
(「ゲンズブールまたは出口なしの愛」ジル・ヴェルラン著/永瀧達治訳)
唯一無二の「だらしなさ」
無精髭に、胸まではだけたシャツ、裸足で革靴などノンシャランな「だらしなさ」を演出をしていたが、やはり、これはゲンズブールしかできないであろうスタイルとかくしんする。
たとえば、彼のアクセサリー類には、カルティエのリングやブレスレット、ブライトリングのナビタイマーなどをさり気なく身につける。それらのアイテムを、彼が身につけることで、そこはかとなくスノビズムを感じさせエスプリが生まれる。
そんなエスプリ(センス)が、誰も真似ができない、唯一無二のゲンズブール・スタイルへと昇華させているのではないでしょうか。
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