「SlowGun&CO.」ローイング・ブレザーをコーデイネイトしてみた
クラシックなIvy Leaguer調のボート・クラブのコーデイネイトを組んでみました。なんとなく、雰囲気出ているでしょう?
ストライプの布地でパイピングをしたジャケットのことを「ローイング・ブレザー」と呼ぶそうです。
何世紀も前のスポーツであるローイング(日本でいうボート競技)。その中でもイギリスの名門大学やアメリカのアイビー・リーガーによる対抗戦のレガッタは、(その中でも、1829年から英国のケンブリッジ大とオックスフォード大が競う「ザ・ボート・レース」と呼ばれる)伝統があり、とても厳格なスポーツなのです。(日本では、91回を迎えた早慶レガッタが有名)
英国が発祥とされるスポーツ(サッカー、ラグビー、テニス、クリケット、ゴルフ、ボートなど)の多くは、スポーツマンシップを謳い、ジェントリーでアマチュアリズムが基礎にあるとされています。
そして、これらのスポーツの発展に欠かせなかったのが、パブリック・スクール(エリート校)を出た学生の多くが進学したエスタブリッシュメントな大学のスポーツ・クラブの存在でした。
この「ローイング・ブレザー」は、エリート大学のスポーツクラブのメンバーの証となっていました。そういう意味で、「ローイング・ブレザー」が、現在のブレザーの元祖であり、そのブレザーがメンズウェアの定番になる基礎となっているのがわかります。
うちに「ロックなスピリット」が隠れています
この「ローイング・ブレザー」をつくったのが、「Slow Gun&Co.」という日本のブランドです。
デザイナーは、小林学氏、ブランドは、1998年にスタートしています。
ブランドコンセプトは「なつかしくて新しい服」が基本のテーマ。1960年〜70年代の映画や音楽をインスピレーションにして、「次の最新」を時代の気分やエッセンスから抽出。デザインからウェア製造までのアプローチを行っている (引用:ファッションプレス https//www.fashion-press.net より)
ブランド・イメージとしては、映画や音楽などのサブカルチャーと服を結びつけた細身で着心地の良いカジュアル・ウェアを提供しているブランドで、トラッドな感じよりロック系なブランドというイメージ。
紹介している服も、細身で、肩パッドや芯地のないコンフォータブルなアンコン・ジャケットで軽く羽織れるタイプのモノです。Vゾーンから見える裏地が、派手なネオンサイン柄なので、ファースト・インプレッションとしては「完全にロックン・ロールなイメージ」だったのです。
これは、もうVネックのTシャツに細身のブラックジーンズをあわせるロッカースタイルなイメージしかなかったのですが…
超こだわりのデザイナー「小林学」氏
でも、SLOWGUN&Co.のことを調べると、オーナー・デザイナーである小林学氏は、かなりの素材フェッチで、近年は「AUBERGE」というフレンチ・ヴィンテージ・ブランドを立ち上げて、モールスキンやリネン素材、デニムなど、さまざまな素材を顕微鏡を覗きながら、再現していくという変態ぶり、素材だけではなくパーツなどにもこだわりをみせたモノづくりをしています。
この取り上げたジャケットもデザインのベースになっている「ローイング・ブレザー」を調べていくと、「やっぱ、トラッドだなー。」と、デザイナーのこだわりが見えてきたような気がします。
現に、BDシャツとの相性もよく、ボーダー柄のニットタイを合わせて、ホワイト・パンツにボート・スニーカーを持ってきたら、完全に「ボート・ハウス・スタイル」の出来上がりです。
ただ、よくわからないのが、裏地のプリント柄のモチーフが、なぜアメリカ西海岸の「ポートランド、シアトル」なのか「ローイング・ブレザー」と「シアトル」の関係の意味がよくわかりませんが。
『トラッドマインド」のあるものが好き
最近、雑誌「popeye」(2021年4月888号「それどこの服?」)でも寄稿されていましたが、ユナイテッドアローズ上級顧問の栗野宏文氏が自著である「モード後の世界」で、提唱されていたキーワードです。
「どんな変人でも、意地悪そうな人でも、辛口の人でも、本質的に人間としてまともかどうかということが、一番重要だと思います。逆に理路整然と美しいことを語っていても、人間的にアウトだと感じられる人はアウトです。 服も同じで僕らはそれを「トラッドマインド」と呼んでいます。
どれほどアバンギャルドな服でも、ただアバンギャルド的であるためにアバンギャルドをやろうとしているものとアバンギャルドをやっているけれど、根本的に服に対する深い理解と愛があるものとでは違うでしょう。」[引用:モード後の世界 栗野宏文]
そしてこうもいっています。
「トラッドマインドとは、いわゆるトラッドな服のだけを指しているのではありません。”背広”の語源といわれるサヴィルロウから発展したスーツは、もちろん、ミリタリー、ワーク、スクールといったユニフォーム由来のものからエスニックやマリンなどさまざまなスタイルや要素が含まれます。いずれも歴史があってこれからもずっと残っていくもの。アフリカの人たちが着ている民族衣装にも、トラッドマインドを感じますが、それらは古くから継承されているものだからです。対照的に、一過性のものには、トラッドマインドが感じられません。」(引用:「popeye」(2021年4月888号「それどこの服?」)
そして、栗野氏はトラッドマインドを感じるブランドとして故イブ・サンローランがデザインした「イブ・サンローラン・リヴゴーシュ」、「シャネル」、「アニエスベー」、「A.P.C」、「ジョルジオ・アルマーニ」「ロメオ・ジリ」、「ラルフ・ローレン」など、日本のブランドでいえば、「コム・デ・ギャルソン」「アンダーカバー」「サカイ」「カラー」なども服として大切なところを守っていて、トラッドマインドを感じるとしています。
自分のスタイルの在り方
自分なりの解釈をすれば、「トラッドマインド」とは、根本的に「自分のスタイル」をもったブランドであり、時代の流行を受け入れることもあれば、抗うこともする。
「しなやかで強い意志」をもったブランドということではないでしょうか。
この「SLOWGUN」が、ユナイテッドアローズで扱われたかは定かではないのですが、紛れもなく「トラッドマインド」を持ったブランドといえるのではないでしょうか。
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