古着散歩・その4

人気急上昇「M-52」フレンチ・チノパンツ
フランスの軍パンといえば、枯渇状態の「M-47」カーゴパンツが依然として人気ですが、最近、めっきり弾数が減ってきたフランス軍「M-52チノパンツ」もここ最近のボリューム感のある着こなしにともない人気が上がっています。

無骨な右綾使用のヴィンテージ・パンツ
1950年代〜60年代にかけてフランスの陸軍に採用された名品チノです。素材はコットンで右綾のウエストポイント(West Point:名前の由来はニューヨーク州にある米国陸軍士官学校の所在地)と呼ばれるツイル織りを使用しています。ほとんどの国のチノパンツが左綾織りを使用しているなか、このチノパンツは無骨な右綾を採用していて、独特の素材感があり魅力のひとつです。米国軍が使っていた素材より手触りがガサッとしており糸の撚りもムラ感が強いように思います。
ちなみに、チノパンツの「チノ」の語源は第一次世界大戦まで遡ります。当時、フィリピンに駐在していた米軍が軍の制服を作るために厚手のコットンを必要としており、綾織コットンを中国からインド経由で英国から調達していたということです。
CHINAの綾織り(Cloth:クロス)のチノ(中国)のクロスと呼ばれるようになったということです。ちなみに「チノ(chino)」とはスペイン語で中国を意味するそうです。
おまけに、チノパンの色を指す「カーキ」の語源は、19世紀にインドに駐留していた英国軍が、敵を欺くために、白い服を土ぼこりで汚して「カーキ」(インドのヒンズー語の方言で土ぼこりという意味)色にしたというのが由来らしいです。
このフレンチチノには、いくつかの製造メーカーが存在しており、メーカーによって若干のデイテールの違いがあります。


製造年が違うようです
同じARIEL AIZENAY社製造のようですがサイズ表記のラベルが違います。
左側のサイズ表記が結構、流通量の多いモデルで「34」の3がレングスを意味して、4がウエストサイズを意味していると言われています。
右側のモデルも同じARIEL AIZENAY社製造のようですがサイズ表記のラベルの表記のしかたが大きく違います。
右側のモデルは84の表記になっていますが、ウエストはほぼ同じで、レングスは若干(2〜3㌢)短めです。


その違いがひとつに、股下にクライミングパンツのようなガゼットが使われているものやプリーツの数が2プリーツのものや1プリーツのもあるようです。

ベルトループは縦の長さは短め目で、幅が太くシングルステッチで処理されています。
バックポケットには、両ポケットともにフラップが付いていてクラシックな印象があります
縫製面では、両サイドのシームはダブルステッチで仕上げられており、ポケット裏地などのスレーキも麻をブレンドしたような丈夫な素材を使って、ユーロミリタリーによく見られる粗野でありながらもテーラードのような仕立てがベース(有名なところではマルタン・マルジェがM-47を裏返しにしたリプロダクトがありました)になっているのも人気があるところなのでしょう
最後に、シルエットは今流行りのワイドテーパードで、特にヒップ回りから裾に向かって、緩やかにテーパードしていくボリューム感になんとなく品があり、粗野な素材が合わさっているところが再評価されている理由なのでしょう。
もうこういった服は、素材をつくれる織り機もなく、一から復刻版をつくろうと思うと、とてつもない金額になってしまいます。
なんたってサープラス・ウェア(軍モノ)というのは、国の威信をかけてつくられるモノなのですから。
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