映画「冒険者たち」はフレンチアイビーの宝庫
アラン・ドロンの映画で、もっともスタイリッシュな映画は1960年公開の「太陽がいっぱい」を思い浮かべますが、それよりも、もっとカッコいいと思う映画が、この1967年に公開された「冒険者たち」(原題:LES AVENTURIERS) です。
元レーサーで自動車技師のローラン、その友人でアクロバット飛行のパイロットのマヌー、そして、ローランの工房に材料探しにやってきた前衛芸術家の卵のレティシア。
それぞれが夢を追いかけ、それを実現するため、互いに絆を深めていく。しかし、うまく行かなことばかり、傷心の三人は人生の一発逆転を狙い、莫大な財宝を積んだまま墜落した飛行機が沈んでいるというコンゴ沖に、船で宝探しの冒険に出る。
見事に財宝を探し当てるが、同じように財宝を探していたマフィアに見つかり、レティシアは船上で銃弾に倒れてしまう…
主演のアラン・ドロンはもとよりリノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シスカムのスタイルは、いま見てもカッコ良すぎるんです。
無茶苦茶!フレンチ・トラッドな主人公マヌー
この映画の主人公の一人「マヌー」を演じるアラン・ドロンは無茶苦茶!カッコ良すぎるのです。
役の設定自体がなんといってもパイロットですよ!
冒頭からパイロットのジャンプスーツで登場すると、ムートンのB-3ボマージャケットに着替えてレティシアとBMWのバイクを2人乗り。
これぞ!フレンチ・アイビー!!
出ました、ノーヘルメット、ゴーグル姿でライディングするマヌー。このシーンは、騙されてパリ市内を危険運転したため、飛行クラブをクビになったところです。
乗っているバイクは、サイドカー仕様になっていて、革製のトランクなどを積み込んでいます。
ブレザージャケット&フランネルパンツにボタンダウンシャツにニットタイをコーディネート。ジャケットがネイビーではなく、ブラックなのが、フレンチ・シックですね。
ボタンダウンは、ブルックス・ブラザーズ製なのか?
結構な頻度で、マヌーのB/Dシャツ・スタイルは登場します。
ノーネクタイで第2ボタンまで外した写真を見たときに、襟のロールの具合や第1ボタンと第2ボタンの間隔などを見る限り、これはブルックス・ブラザーズ社製の当時なら6ボタン仕様のB/Dシャツに間違いないと思っていたのですが、3枚目の写真で気になることが、なんと襟の後ろのボタンのようなものが見るではありませんか。
ブルックス・ブラザーズのB/Dシャツは、別名(というかB.Bでの正式名称は)ポロカラーシャツと呼ばれています。これはポロ競技のときに襟がヒラヒラするのを抑えるためのアイデアで、衿先はサイズの小さめのボタンで止めているのは有名な話ですが、ブルックス・ブラザーズ社のB/Dシャツは、襟の後ろには、ボタンがないのです。
ということで、残念ながら、これはブルックス・ブラザーズ社製ではなさそうです。映画で使用するのですから、特別に誂えた衣装であることが推測されます。
しかし、襟のロールや開き具合、もっと言えば生地の素材感などは完全にトラッド・スタイルを再現しているといえます!
スタイリッシュな魅力全開のジョアンナ・シスカム
ヒロインのレティシアを演じるジョアンナ・シスカムも魅力全開です。
スラッとした細身のスタイルを活かしたフレンチカジュアルなコーディネートはいま見ても古びていない。
冒頭のシーンのリノ・ヴァンチェラ演ずるローランの解体工場兼工房に現れるシーンでは、エンジのケーブル編みのカーディガン、コーデュロイパンツに、同じカラーのバンダナ風のスカーフを巻いて、G社かH社のブランドっぽいホースビットの付いたショルダーバッグを合わせている
その後もモペッド(ペダル付き原付自転車)で登場するシーンは、ネイビーのPコートの襟を立ててその上からチェック柄のスカーフを巻き、ジーンズを合わせています。
なんといっても自転車の後ろのサドルに取り付けてあるバッグがいいです。こんなおしゃれなモペッドを復活するべきですよ!
ローランが作ったエンジンをサーキットでテスト走行するのを見に行ったときのコート・スタイルです。観客席にいた二人が、エンジントラブルを見て駆け下りてくるシーンで、チラッとコートの裏地が見えるのですが、どうもバーバリーのようです。膝上丈ぐらいのショート・バルマカンコートにロングブーツがいいです。「カッコいい!」しか出てきません。
宝探しをする船上でのスタイル
宝探しをするヨットの船上のスタイリングも見逃せません。
まずは、リノ・ヴァンチュラ演ずるローランが着るおそらく麻のイタリアンカラーシャツ。ピンクが一層、大人の着こなしを演出しています。
マヌーはかなりフィットしたジーンズよく見ると「501®」を穿いていますネ。撮影時期から見ても、細身のシルエットからも、おそらくは「66モデル」ではないでしょうか。
いい塩梅に色落ちしたジーンズに、ネイビーの半袖リブニットがフィットしています。また足元には、エスパドリーユを履いていかにも南仏のマリンっぽいスタイリングです。
レティシアのお揃いの色合わせをしていて、ユーロ・アメリカンスタイルでなんとも若々しいリゾート感を醸しだしています。
レティシアの育った島で
いよいよ終盤のシーン。レティシアの財宝の取り分を親戚に持っていく場面のローランとマヌーのスタイリングも秀逸です。
大金持ちになった二人。格好の上品な感じになりました。マヌーはナチュラル・ショルダーのツイードジャケットにフランネルのパンツ。
ローランは、ブルックス・ブラザーズ社のサックスーツっぽいデザインのスーツ姿がキリッとした印象です。手に持ったボストンバッグもオータクロア調でいい感じですね。
ローランは三つボタンの段返りサックスーツ。どちらも袖丈がいい
海に浮かぶ古城島で、ナチスの武器を見つける二人。マヌーが履いているパンツは、バックポケットの形状からLeeのもので、どうもコーデュロイパンツのようです。サーキットで着ていたB-3ボマージャケットにも合わせています。
いかがでしたか?一部のフランス映画ファンの間で評価の高い「冒険者たち」。1967年公開された、この映画での着こなしは、いま見ても新鮮です。
今も廃れることのない永遠の定番と呼べるアイテム数々、現在のコーディネートにも遜色ないスタイルを見ることができます。
映画って本当にいいですね! それではサヨナラ!!
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