「プレッピー・スタイル」の法則

ルール

「プレッピー・スタイル」の歴史

「プレッピースタイル」の発祥は、米国で1980年に発行された「THE OFFICIAL PREPPY HANDBOOK」という書籍から始まったとされています。

「The Official PREPPY HANDBOOK」

当時は、アメリカの上流階級を揶揄ったユーモラスで、面白おかしく、そして真面目に解説していると受け取られました。一種のパロディモノのような感じで、ちょっと遅れて、日本でも映画「私をスキーに連れて行って」をつくったホイチョイプロダクションが1983年に出した書籍の「見栄講座」の副題が「THE OFFCIAL MIE HANDBOOK」となっていて、『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』のパロディをしていました。

正統的なメンズ・ファッションの流れは、歴史的に見れば、始まりは英国の「クラシック・スタイル」米国に渡り「トラッド・スタイル」⇒大人社会の「トラッド」がカレッジに持ち込まれ「アイビー・スタイル」⇒そこからひねったのが「プレッピー・スタイル」という風に移り変わって来ています。

源流は「アイビー・スタイル」

日本では、1960年代にアパレルメーカーの「VAN」がそのスタイルを模倣してキャンペーンのひとつとして打ち出した『TAKE IVY』の写真集がバイブルとなっていました。

元祖IVY「ヴァンジャケット社」

「アイビー」が米国の北東部のアッパークラスの大学のアメリカン・フットボールの対抗戦グループの「アイビー・リーグ」に由来しており、ハーバード、イエール、ペンシルベニア、プリンストン、コロンビア、ブラウン、ダートマス、コーネルの名門大学の学生の服装やキャンパスライフからきています。

パワーハウス社の英語版「TAKE IVY」


2010年代になり、ブルックリンの出版社のパワーハウス社が本の版権を取得して英語版が出版されるや、5万部を超える部数が売れることになり、米国の西海岸のセレクトショップでも、店頭にこの『TAKE IVY』が飾られていたりして、米国のメンズ・ファッションは完全に日本の「アイビー・スタイル」を逆輸入することになりました。

60年代の『アイビー・スタイル』

左の写真は、1965年に日本で出版された「TAKE IVY」の有名な写真です。プリンストン大学生の日常の服装を撮影したものですが、この写真の右側の男性のスタイルが「プレッピー・スタイル」のエッセンスそのものです。「白のロング・スリーブB/Dシャツにパステルカラーのショート・パンツそして裸足にローファー」いま、見ても新鮮でシンプルでカッコイイ!スタイリングです。

「プレッピー・スタイル」は日米同時進行(というより日本が先行)

この『アイビー・スタイル』を源流として、1980年11月に刊行された「THE OFFCIAL PREPY HANDBOOK」は、当初、米国ではアイビーリーグを中心にしたプレップ・スクール(名門校)に通う良家の子息をパロったものとして出されたのですが、その内容があまりにも詳細に紹介されており、当時の日本の若者には、新しいスタイリングのテキストとして取り入れられました。

実のところ、このカレッジ・スタイルに関しては、米国人よりも日本人のほうが市場に取り上げるのが早かったのです。「メンズクラブ」で、1979年の12月号でプレッピー・アイビー特集号『What is PREPPIE?」という特集を組んでいたのです。

「メンズクラブ1979年12月号 プレッピー・アイビー特集号」

プレッピーはパロディ・スタイル?

これには、この年の夏に出た、ヴァージニア大学の学生だったトム・シャドヤックの“Are You A Preppie?”というパロディ・ポスターを目にしたメンズクラブの編集者が、即座に特集として取り上げたということです。

「Are You A PREPPIE?」のポスター

“ナサエニル・エリオット・ワシントンⅢ世”という名前で、骨縁の眼鏡にネイビーブレザー、ボタンダウンシャツのインナーにポロシャツを合わせて太めのチノパンツに腕時計のバンドとお揃いのストライプベルトを合わせて、足元はLL BEANのガムシューズを裸足で履くスタイルが元祖プレッピー・スタイルということになります。

そして、1年後の1980年11月の刊行された、リサ・バーンバック著の「オフィシャル・プレッピー・ハンドブック」が米国でも話題になり、半年後に日本語版が出版され10万部を売り上げこととなります。

ファッションとしての『プレッピー・スタイル』

ということで、『プレッピー・スタイル』は、日本のメンズ・ファッションがそれまで「後追いの文化」であったのを完全に払拭し、欧米の再先端の都市のファッションと肩を並べる最初のキッカケになったのではないかと思います。

VANから始まった日本のメンズ・ファッションが、1978年に、そのVANの倒産をしたおりに空白となった400億円相当の市場になだれ込んできた「BROOKS BROTHERS」や「Ralph Lauren」などの本場のブランドを消化し編集したトラッド・スタイルはその後もどんどん昇華していったのです。

プレッピーは永遠なり

当時のプレッピー・スタイルのブームは1年ほど過ぎてしまったのですが、その後も90年代にはフランス版プレッピースタイルともいえる『BCBG』から「フレンチ・アイビー」、その流れから「イタリアン・アイビー」など文脈を変えながら、日本の「アイビー・スタイル」を根底にしたトラディナル・スタイルが数々と生み出していきました。

また、本家のプレッピー・ハンドブックを出したリサ・バーンバックは、2011年に30年の時を経て『Ture Prep』として新しいプレッピーのルール・ブックを刊行しました。

現代においては、プレッピースタイルはファッションだけではなく、もはやライフ・スタイルとして脈々を変化しながらも受け継がれていくようになっていくでしょう。

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