センスのいい人 日本代表・開高健 

ルール

開高健とジーンズ

「長い旅を続けて来た。時間と空間と、生と死の諸相の中を。そしてそこにはいつも、物言わぬ小さな同行者があった。」

生物としての生物 開高健 集英社文庫

男の生き方のひとつの理想を体現し、それを記した作家「開高健」。

没後、30年以上経ちますが、その代表作である「オーパ!」が再販されるなど、未だにファンが増え続けているという。

1984年に刊行された「生物としての静物」の中には、作家として、特派員として、そして釣師というより冒険家として、共にした愛用品(氏は物言わね小さな同行者と表現した)の数々を紹介している。

さすが体現主義を貫く作家です。 ライター、パイプ、万年筆、ナイフ、釣具、正露丸やバンドエイドなどの薬など、氏の長い旅に欠かせなかった道具たち。使わなかったもの、氏の独特の言い回しで、手を伸ばそうとしなかったもの、指紋をつけなかったものまで語り尽くしている。

この愛用の道具として、ジーンズについてのくだりがあリます。

「こんないいモノはないと感動したネ」

「新品のときは板のようにつっぱってゴワゴワのジーンズのズボンも古くなると使用感皆無になる。こうなるとうかつに手放せるもんじゃない。〈中略〉安くて、丈夫で、永持ちがし、体に無理を感じさせず、いつでも着用でき、上に何を着てもフィットし、誰にも見とがめられず、ふりかえられることすらない。こんないいモノはないと感動したネ。」

生物としての生物 開高健 集英社文庫
バンダナにネルシャツそして「ジーンズのズボン」

と手放しで褒め称えています。

「生地はもともと木綿で、コットンはもっともヒトの肌にぴったりくる繊維であるとされているから、おそらく今後もすたることなく愛用されていくことであろう。新品の深い紺青色のジーンズのズボンにピシッとすじがたっているのは眼にとても爽やかで見て飽きがこない。」

生物としての生物 開高健 集英社文庫

といい、普通のズボンと同じように真ん中に筋(センタークリーク)をたてるのが好きになり、そういうのはちょっとした外出に使い、膝が抜けたよれたモノは普段使いにしたようです。

センタークリークのジーンズ

カジュアルなファッションを好み、ファッションに対して、こだわりがあるようではなかった開高健氏ですが、徹底的に遊び、徹底的に酒を飲み、徹底的に生き抜いた、そんな本物の生き方をした人物は、ジーンズも人生の小さな同行者として独自の感性で愛し続けたのでした。

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