夏といえば思い出すマドラス・チェック

ファッションアイテムの中でも、「マドラス・チェック」といえば、夏の代表的なマテリアルになるのでないでしょうか。俳句でいえば、「夏の季語」といっていいでしょう。
マドラス・チェックとは
インド南東部のマドラス地方で作られる特有の多色使いの格子柄のことをいい、一般的には、綿素材で織られたものが多く、昔は、インド綿といえば、「マドラス・チェック」を指していました。
インド綿が正式なもので、元来は草木染めで作られていて、色落ちがすごくて、マドラス・チェックを「にじんだチェック」ともいわれます。洗うごとに色落ちをして風合いが柔らかくなっていきます。
いまは、チェックのパターン(柄)をいうこともあり、綿素材の他にも、麻、綿麻やポリ混紡素材など様々な素材でマドラス・チェックの名称を使っています。

キング・オブ・マドラス

勝手に「キング・オブ・マドラス」と名付けてしまいましたが、私のなかで、マドラス・チェックが最も似合っていた人物といえば、真っ先に思い浮かぶのが、映画「アメリカン・グラフティー」の主人公のひとり、テリーを演じたリチャード・ドレイファスさんではないでしょうか。
映画の舞台設定がいいですよね。1962年9月初めの土曜日、カリフォルニア州の片田舎、モデスト。ベトナム戦争前のアメリカが最も輝いていた時代の若者たちのそれぞれの一夜を描いた名作です。
監督は、ご存知!ジョージ・ルーカス。この映画の大ヒットによって、監督として認められたルーカスは、あの「STAR WARS」を制作することができたと言われています。(この映画のことを語りだすと止まらなくなりますので、この映画の話は別の機会に)
テリー君は伝統的な「アイビー・スタイル」


映画での「テリー」君の設定は、地元モデストの高校を卒業して、翌朝には東部の大学へ出発する。というふうになっているそうです。ですから、風貌も西海岸の片田舎の頭の良い兄ちゃんが、東部の大学に憧れていていよいよ乗り込むぞという感じ。当然、服装は東部の学生風なります。
では、「テリー」君のコーディネイトを見てみましょう。
まずは「マドラス・チェックのB/Dシャツ」ちゃんと前身頃の柄合わせをしています。安物のシャツだと柄合わせをしていないモノも多いですが、着用しているB/Dシャツは、左身頃と右身頃の柄がきちんと合わせています。
インナーのTシャツは、画像を見る限り、厚手のTシャツを着ているように見えます。
パンツについては、生地の光沢感からみると綾織りのチノパンツではなく、平織りのノープリーツのコットンパンツですね。そして足元は、ネイビーのキャンバス・デッキ・シューズで決めています。
これは、紛うことなき、アイビーリーガー・スタイルですよね。このスタイルは永遠です。
日本で初めてマドラス・チェックを使ったのは「VAN」
VANができた当初、企画をしていたくろすとしゆき氏は、「GQ」や「エスクァイア」といった海外の雑誌を見て、マドラスチェックの存在を知り、国内の生地屋を探し回った果てに、兵庫県西脇市のある機屋にたどり着くのです。
そこにあったのは、「米国向け」の輸出用の生地で売り先が決まっていて、まったく取り合ってくれなかったそうです。ところが、倉庫の奥に「難ありのB反」といわれる規格外品があり、それなら売ってくれるということで、それを安く手に入れ、早速、日本製のマドラスチェックでジャケットやシャツを作って売り出したところ爆発的に売れたそうです。
こうして、日本の夏を代表する素材として浸透した「マドラスチェック」は、やはり「VAN」のおかげなのでした。
下の写真は、70年代頃の夏のキャンペーン「SPORTS COMMUNICATION」のポスター。ジャケットやシャツ、パンツはもちろん小物までマドラス・チェックで作っていました。

モデルはどう見ても荒川良々にしか見えません
特に、床に置かれたマドラス・チェック製に「スーツケース」は当時、高校生がよく持っていました。中に入れるのは、お弁当箱とペンケースぐらいで、サイズは結構大きかったのですが、中身はスカスカでした。(逆に、中に荷物を入れすぎると重量に耐えきれずに型くずれしたりして壊れてしまいましたが)70年代頃の学生が持つカバンは、マジソンバッグ(マジソン・スクエア・ガーデンのプリントを施したナイロン製のボストンバッグ)か、このスーツケース(マドラス・チェックの他にナイロンキャンバス製もありました)でした。
クレージー・パターンもかっこいい
マドラス・チェックのちっさな生地を数種類、継ぎ合わせた生地を「パッチワーク」とか「クレージー・パターン」とか呼んでいます。トップスでは、ジャケットやシャツ、パーカー。ボトムは、ロング・パンツはもちろん、膝丈の「バミューダ・ショーツ」でもよく作られています。

TAKE IVY風にコーディネイトしてみました
「クレージー・パターン」に限らず、マドラス・チェックには、バミューダ・ショーツがよく合います。
今回ご紹介した、「マドラス・チェック」は、まさしく夏の季語。昔もいまもずっと愛され続ける夏の素材です。
余談ですが、今回のタイトル「夏とマドラス」ちょっと気に入ってます。普通といえばそうなんですが、日本語と外国語の単語の組み合わせですが、なんとなくイメージが膨らむものです。
サマセット・モームの古い小説「月と6ペンス」のタイトルがカッコいいなと思ってました。2つの言葉のイメージが絡み合っている感じがしませんか?
「夏とマドラス」、暑い夏の日差しに、さらっとしたチェック柄を着ることでの清涼感を感じませんか。暑い夏には、「マドラス・チェック」を着てお出かけしましょう。
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