アメトラ 日本がアメリカンスタイルを救った物語 発行元 DU BOOKS
デーヴィット・マークス 著
奥田祐士 訳
著者は2001年にハーバード大学・東洋学部を卒業後、慶應義塾大学大学院で修士課程を卒業して日本の音楽やファッション、アートについThe NewYorker,The New Republicなどで執筆。
まずは、外国人の筆者がこれほどまでに、日本のファッションに精通していることに驚かされた。「COOLJAPAN」で日本のコスプレやジーンズ(この本でも詳しく書かれていますが)などは世界に発信していることは知っているけど、アイビースタイルが海外(特にアメリカ)に逆輸出していたとは。
日本人の勤勉で物にこだわる姿勢が、こういった現象を起こしているのだろう。 これは何も服だけではなく、自動車や電化製品などいろいろな工業製品できめ細かなモノづくりを世界に示した。
それでもいまや「文化」として、本家を超えるものを輸出できていることはスゴイことです。
戦後からの日本のメンズファッションの歴史を克明に描いた本書は、1964年の東京オリンピックの前夜の銀座の裏通り、「みゆき通り」にたむろする奇妙な格好をした若者たち「みゆき族」から始まり、そんな若者を先導した「アイビー」の教祖「VAN」の盛衰、銀座を「アイビー」が占拠して以来、50年間にわたり、世界一ファッションにこだわる国という現在の地位を築いていった。戦勝国の豊かな文化に憧れた日本人が「メンズ・ファッション」を通じて、最初はチンケでチープなモノマネに過ぎなかった洋服を徐々に自分たちの風土に溶け込むように創り上げていった。
アメリカンスタイルを新しい文化として紹介した「MEN’SCLUB」「Made In U.S.A」「POPEYE」などのメディアが次々に発刊され、そこで取り上げられたモノを追いかけて輸入することで、ビジネスを成功させ、独自の服飾文化を作り出した人々。何事にも真摯に向き合い取り組んでいくアルチザン的な考え方やモノづくり。
そんな姿勢が60年代の「アイビー」を生み70年代の「ジーンズ」に代表されるように発祥国のオリジナルを遥かに凌駕する製品を作り出し、80年代に入ると山本寛斎や高田賢三を始めとして、コムデギャルソン、山本耀司、三宅一生の日本のデザイナーやブランドが創り上げるクリエイティブな作品がヨーロッパに渡り、オリエンタルな衝撃を与えました。そして90年代後半からはア・ベイシング・エイプやエヴィスのようなストリートウェアブランドが海外のセレブ層に受け入れられるようになっていきました。そして、ファッションにおける日本の卓越性は、現在、世界中で広く認められるようになりました。
そんな日本が、海外の洋服文化(特にアメリカンスタイル)を模倣するようになり、すでに70年が過ぎました。ありとあらゆるデザインソースやアイデアを吸い尽くしてアメリカ以上にアメリカン・クロージングを完成させ、いまやオリジナルとして、全世界へと発信し多くの人々の信頼を得ている。
しかしながら、もう一方で、国内は慢性的なアパレル不況にあった業界が、このコロナ渦で一気にあぶり出されて瀕死の状態になっている。
いま一度、アパレのマーケットを活性化するためには、業界だけではなく、国が絡んで立て直して必要があるのではないだろうか。この素晴らしいアルチザンの国のモノづくりを守っていくために。
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