サステイナブル(SDGs)な服の在り方とは  これからのファッション・ビジネスを示す3つの真実

ルール

Amazonの築いたP2Pの流通システムが生んだ「新しくて古いマーケット」

(雑誌pen 9/1号 ネットの台頭が生んだ、ファッション市場の新たなサイクルより)

以前からインターネットは「中古品」と相性がいいと言われています。これまでの流通システムは、基本的にはマスプロダクトが中心でマス生産➠マス消費の造り手側がイニシアチブを握った効率を優先した「新品」を扱った流通システムでした。

が、ここ数年のインターネットの発達により、「P2P」(1対1)のビジネスが構築されてきています。その象徴的なのが、巨大流通マーケットとなった「Amazon」は古本のマーケットから始まっています。「Amazon」の先進性は、インターネットを用いた「中古マーケットビジネス」をすすめることで在庫を持たずに商売を成立させてしまったことなのです。ジェフ・ベゾスは「在庫は各家庭の本棚に眠っている」と言い、それらの在庫を「P2P」でネットワーク上に構築することで巨大な中古品マーケットを生み出したのです。

中古マーケットが新品市場を凌駕するインターネットビジネス

コロナ渦のなかで、1人の少女デザイナーであるベラ・マクファデンのブランド「iガール」が中古ファッションマーケットアプリ「ディポップ」(イギリスのフリマアプリのようなもの)において100万ポンドの売上を突破した。

ベラはファッションスクールで学んだデザイナーなんかではなく、ファッション好きなインスタグラマーだったのです。彼女は、質屋や救世軍などから買ってきた古着や小物などを自分なりに手直しして販売することから始めました。Instagramで60万人、YouTubeに10万人のフォロワーを抱える彼女はそんなZ世代のハートを完全に掴んでしまったのです。

「彼女がリプロダクトする服や小物がすべて彼女のテイストとボディスタイルに合わせてつくられている」このことが極めて重要なのです。これまでのファッションデザイナーは、自分の体型に合わせて服をつくるということを前提に考えてもいなかったからです。

ビジネスメディアの「クォーツ」の記事には「Z世代が、自分たちでものをつくり、自分たちで買う最初の世代になるだろう」と予測しているそうです。

世代、テイスト、体型、人種、倫理観、性指向などによって分類されていたそれぞれの当事者性とその中でモノが生産され消費されていくサイクルが従来の製品開発とは全く異なる習慣とプロセスによって構成されるといわれ、とりわけファストファッションに代表される、マーケティングドリブンなビジネスのアンチテーゼになっているということです。

新しいサイクルの中で中古品であることがことさら重要な意味をもつ

それは単にインターネットと親和性が高いからというだけではなく、マスプロダクト消費の20世紀のサイクルが膨大な廃棄品を生み出し、環境負荷を増大させていることやそうしたシステムが低開発地域の安価な労働力を搾取していることなどをZ世代が強く問題視しているからです。

たとえ、彼らがインスタグラムに投稿するために一回しか着ない服を安価で買い求め、それをすぐに中古品マーケットで売りに出したとしても、それが「循環型経済」に資することになると考えています。

こうした新しいサイクルを「アップサイクル」と呼び、その中でダイナミックなマーケットが生み出されているということです。

絶えず、新品を買わせ続けることで生きながらえてきた既存のファッションサイクル。「服は新品を着る」「服を所有する」「服は専門家がつくる」「シーズンごとに新作が投入される」といったいままでの商習慣が新世代の人たちによって覆されてしまっている。この潮流はもう後戻りすることなく、それにうまく適合して乗り切らなくてはならないのでしょう。 

この業界が、絵空事使のように使っていた「サステイナビリティ」「リサイクル」「フェアトレード」といった言葉を真剣に考え、実践していかなければならないところに来ていると思います。

また、ベラ・マクファデンのような「ベットルーム・アントレプレナー」と呼ばれる素人起業家たちが拡大していき、ファッション版のYou Tuberがイニシアチブ握っていくことになるのでしょう。

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